旅立ちの日
眠れない夜の終わり
私を起こす太陽と呼応して
んんんんーっと伸びをする朝
1階から聴こえるトントンの音に
久々に耳を澄ましている私が居る。
いつも通りのお母さんの音が
家族みんなに『おはよう』と告げて私を誘う
いつもよりゆっくりと
階段を降りながら見つける
小さかった頃の私のしるし
それは傷と言うには愛おしい
私がこの家に生きた証。
『おはよう』の言葉にいつもなら
振り返る母が今日は下を向いている
お互い流れそうな嬉し涙を堪えて
今日を迎えている。
明日には愛する人の元で
トントンを響かせる私と母の
最後の1ページ。
あなたの様に美しい
"女性でいたい"と刻む1ページ。
あとがきにそえた一言が
定番でごめんね、お母さん。
『産んでくれてありがとう』
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